新しくて、リアルで、そして優しい物語、鉄血のオルフェンズ全体の感想

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新しくて、リアルで、そして優しい物語、鉄血のオルフェンズ全体の感想

先週末鉄血のオルフェンズが最終回を迎えた。個人的にはとても満足がいくラストだったのでここに感想を記しておこうと思う。

初めに断っておくが、俺はアニメをほぼ見ない。ガンダムシリーズをぼちぼち見ているぐらい。それ以外だと最後に見たのは「四畳半神話体系」だと思う。ので、アニメ史の中での鉄血のオルフェンズ(以下鉄血とする)を語ったり、アニメの文法、構成みたいなものからは語れない。ので、ガンダム00(以下00)との対比と時勢の反映といった視点から語ってみたいと思う。

個人的に鉄血は00の続編だと思っていた。と言うのも鉄血自体が00の劇場版の終了直後に企画が立ち上がっており、スタッフも00とよく似通っていたからだ。雰囲気も00以降のAGE,ビルドファイターズ、レコンギスタのどれよりも鉄血は00に似ていた。

途中まで厄災戦ってのが00の一連の事件のことで(刹那が変革に失敗したif世界)、エイブラハムリアクターはGNドライブじゃねーのかと考えていた。この二つ意味不な粒子を出すし、00のガンダムの名前は天使で、鉄血は悪魔だし。

細かい類似点を語ると切りがないが、この2つの作品が最も似ているのは「世界の枠組みそのものが歪んでいて」、主人公がそれを自覚していることだと思う。小競り合いレベルのことは起こっているものの、2大勢力によるガチの戦争とかは行われれておらず(最後までそれは起こらない、戦力の規模が違いすぎる)、大半の人間は幸せに暮らしている。そして、その世界の中で主人公二人は歪みを押し付けられた、搾取される側である。

が、ここからが対照的だ。00の主人公である刹那は「ガンダム」に窮地を救われた。彼はそれに憧れて、自らが「ガンダム」になることを望みこの歪んだ世界を変革しようとする。ここで大事なことはこの「ガンダム」が、具体的なものではなく抽象的な概念であると言うことだ。「武力による戦争の根絶」という矛盾だらけの概念なのだけど、彼はその思想に傾倒しその概念そのものになろうとする。なので、「俺がガンダムだ!」という名言(迷言?)が出でくるのである。思想に身を委ねているので彼は迷わないし強い。そして、00の(TV版)には、幸運なことに世界の歪みの元となっている人物がいるので彼をラスボスとして倒すことで変革は一応の達成となるのである。20081013-02 20081013-03

一方、鉄血の主人公である三日月を救ったのは同じ境遇の兄貴分オルガの具体的な指示だった。見方によっては、オルガの指示により人を殺してしまった三日月は抜け出せない争いの輪廻にハマってしまったとも言えるのだけど。三日月自身は救われたと思っているので、生きるためにオルガ自身にすがる事になる。だから彼は何度も劇中でこう尋ねるのだ

「ねぇ、オルガ。次は何をすればいい?」

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彼を救ったのが、思想でも、主義でも、宗教でもなかったのは不幸であったと思う。このような抽象的な概念は、抽象的であるが故にその人間の生きるべき道を照らし出す。三日月も、鉄華団も思想がないが故に実は最後もまで進むべき道がわからず、どこかにたどり着くどころか実は同じ場所で足踏みをしていたのではないかと思う。最後まで彼らは戦いの螺旋の中で、誰かの道具として戦うことしかできなかった。

さらに不幸な事に鉄血の世界には歪みの明らかな原因がないのである。何かが決定的に間違っている。けれど、それを誰が生み出しているのかわからないし、どうして歪んでしまったのか判らない。だからこの物語にはラスボスがいないのである。

このラスボス不在というのはなかなか新しい試みだと思う。

そして、この2つの世界観は時勢を反映しているように思える。

00が作られたのはちょうど10年前00年代の後半であった。政権交代の前夜であり、あの頃は皆歪みの元となるようなものがあって、それを少しずつ正していけば、変革を達成できるかもしれないと言う希望があった。

が、鉄血が作られた現在は状況が異なる。

変革は失敗した。皆が考えていた歪みのような元のようなものはなくて、ただ変わらないシステムだけがある。何かが確実に間違っているのだけど、それが何かはもう判らない。だからどうすれば良いのか判らない…

リアルに連動して、鉄血の世界観の方が一見より救いがないように思える。

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三日月も、鉄華団も状況に必死に対応しただけで、どこにも行けなかったし、何者にもなれなかった。彼らの名前が歴史に深く刻まれることはないだろうし、刻まれたとしてもそれは罪人としてである。

でも、最後に世界は少しだけマシになっている。火星への搾取はなくなり、経済状況は少しずつ改善しつつある。子供達も当たり前に学校に通えるようになった。生き残った鉄華団のメンバーも少なくとも毎日MSで戦争をする必要は無くなった。

どうしてだろうか?

それは彼らの周りが変わったから。

状況の改善に大きく寄与したのは、敵役だったラスタルだった。彼は既に完成された大人として描かれてるので例外だとしても(逆に言うと彼は彼なりの理想を手段を選ばず貫き通した)、鉄華団のメンバーが必死に生きる姿に感銘を受け徐々に考えを行動を変えていく。

クーデリアは正にその象徴だし、戦後を担うメンバーであるジュリエッタもガエリオもそうである。

彼女たちが行動した結果として世界が変わった。これは希望だと思う。

主義がなくても、どこへも進めなくても、必死にその場で生きるだけで誰かに影響を与えることができる。

そして、それが世界を変えることに繋がりうる。

とても優しい物語だと思う。

 

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